事業紹介

人工衛星の追跡運用

追跡ネットワークシステムは、アンテナや送受信機を持つ地上局、地上局を遠隔監視・制御する局管制システム、運用計画を立案・管理する計画系システム、それらシステムとユーザを結びつける基幹ネットワークなどにより構成されています。これらのシステムを維持管理し追跡管制に供するのが基幹ネットワーク整備チームの役割です。軌道上の人工衛星の運用を支えるため、追跡ネットワークは24時間365日正常に働き続けることが求められ、それに応えるのがチームの責務です。

追跡運用技術の開発・整備

アンテナからネットワークまで、追跡管制のあらゆる領域での研究開発を行うのが技術開発チームです。近年では高速データ通信を可能にしたKaアンテナや、深宇宙探査で活躍する美笹54mアンテナなどを開発。さらに通信の品質向上と機能拡大を実現するDTN技術の開発と実証実験なども進めています。通信とデータハンドリングの領域で積み重ねた技術と経験を有し、日進月歩で高度化する宇宙通信のニーズに応え続けています。

人工衛星の軌道管理・技術開発

大気抵抗や地球重力場の影響で衛星の軌道は日々変わります。衛星ミッションを継続するための軌道管理、予測軌道をもとに追跡局へのアンテナ予報値提供を行っています。更には、地球観測SAR衛星の精密軌道決定も実施しています。
近年は、衛星の運用を遂行するために宇宙ゴミとの衝突回避運用が重要になってきました。JAXAは、宇宙ゴミと衛星との接近情報を防衛省や米国から受け取り、衝突リスクが高ければ軌道変更計画案を衛星管理者へ提言しています。軌道上衝突回避は、全世界で実施すべき課題なので、JAXAは宇宙ゴミとの衝突回避支援ツール「RABBIT」を国内外へ無償開示することで衝突回避技術の底上げを図っています。
また、JAXAはSLR(衛星レーザ測距)局を保有し、低軌道衛星との距離をセンチメートルで計測する事ができます。SLRを用いる事で衛星の精密軌道決定、衛星搭載GNSS受信機の性能評価を行っています。SLR関連技術として、衛星に取り付けるリフレクター「Mt. FUJI」も開発しました。詳しくは https://track.sfo.jaxa.jp/project/mtfuji.html
最近、SLRによる宇宙ゴミ観測など、保有する技術を組み合わせた挑戦を行っています。

地上局3局の施設運用

JAXA追跡ネットワーク技術センターの勝浦・増田・沖縄宇宙通信所は、人工衛星や探査機などの追跡管制を行うために必要な施設です。それぞれ大型のパラボラアンテナを複数備える事業所としてJAXAの追跡管制の地上ネットワークを構成しています。これら宇宙通信所施設のマネジメントが私達の仕事です。
また、勝浦・増田・沖縄の各宇宙通信所では、JAXAの事業所として、広く一般の方々への広報・情報発信の活動も行っています。各宇宙通信所における広報展示施設の運営やそれぞれの立地自治体でのイベント等の機会を通じて、JAXAの活動をより身近に感じて頂くための取組みも積極的に取り組んでいます。

臼田宇宙空間観測所

臼田宇宙空間観測所は、彗星や惑星や小惑星のような天体に接近して 観測を行う深宇宙探査機に向けて動作指令を送信したり、探査機から の観測データを受信するために建設されました。超遠距離にある探査 機からの微弱な信号を受信するため、都市雑音などの妨害電波が 少ないこの地が選ばれ、1984年10月から運用しています。 施設の中核をなす大型パラボラアンテナは、直径64mの反射鏡を 有し、総重量は約2,000トンです。宇宙探査機との交信はS帯(2GHz) とX帯(8GHz)で行われています。 同様の目的を持つアンテナは、米国(NASA)およびロシア、ESA、 中国、インドが保有しています。 10mパラボラアンテナは、地球を回る電波天文衛星の「はるか」の VLBI(長超基線干渉計)観測データの取得を行っていましたが、現在 はVLBIや高速データ伝送の各種実験に使われています。 また、64mアンテナはVLBI技術を使った探査機の高精度軌道決定、 アンテナ位置の高精度測地、天体観測にも利用されています。

深宇宙探査用地上局の維持・開発整備

JAXA探査機をはじめとして、国内外の深宇宙探査ミッションを地上から安定して支えるため、JAXAが国内に展開している大型パラボラアンテナ(臼田64mアンテナ、美笹54mアンテナ、内之浦34mアンテナ、20mアンテナ)の維持運用や次世代の深宇宙探査機等の要求に応えるための地上局の検討や要素技術の研究などを行っています。
また、海外機関のミッション支援に対応できる機能を追加し、長年求められていたNASAやESAとの相互運用支援の準備も進めています。

宇宙状況把握(SSA:Space Situational Awareness)

JAXAでは宇宙状況把握(SSA)のため、スペースデブリを観測・解析する3システム(解析システム、レーダーシステム、光学観測システム)の開発を2022年度末に完了し、現在はシステムの維持・運用を行うとともに、JAXA衛星がスペースデブリと衝突するリスクを回避するための活動、スペースデブリの再突入予測解析等を行っています。また、国のSSA活動に技術で貢献するため、軌道解析技術の向上やレーダー及び光学観測の性能向上等SSA技術の研究開発に取り組んでいます。また、スペースデブリだけでなく、プラネタリーディフェンス(地球近傍の小惑星観測)や人工衛星打上げ時に衛星やロケットの軌道情報が把握できない場合の観測等SSAシステムを活用した様々な活動にも取り組んでいます。

国際協力

計画チームの業務は大きく3種類あります。第一はJAXA内での追跡ネットワーク事業の計画と予算の管理。第二は海外宇宙機間との協力推進や、通信方式の相互運用性を高める技術議論を進めること。そして第三はJAXA内外のユーザーとの、追跡ネットワーク利用の準備調整や運用の計画調整です。第一は事業推進や調整が主な仕事ですが、第二、第三では現在ある課題の新しい解決策や、将来の可能性を提案し、ユーザーニーズに合った追跡ネットワークを提供していくことが中心的な仕事です。以上から計画チームは、関係する組織や人のニーズと、追跡ネットワークの技術とを結びつけて未来の宇宙通信を提案していくコーディネーターといえます。