JAXAのSSAシステムでは、地球観測衛星などがある低軌道帯のスペースデブリをレーダーで、放送衛星などがある静止軌道帯のスペースデブリを光学望遠鏡で観測しています。これまでのJAXAのレーダーは高度650kmであれば直径約1.6mのスペースデブリまでをとらえることができていましたが、もっと小さいものも衛星の脅威になりますから、性能向上が必要でした。新しいレーダーはアンテナのサイズを大きくするとともにアンテナ素子数拡大や出力アップなどで、同じ高度650kmなら直径約10cmまでとらえられるようになります。

また光学望遠鏡は、これまで使用していた口径1mの望遠鏡の不具合を修復し、将来のさまざまな観測にも役立つような機能追加を可能にするインタフェイスを設けるなど、リニューアルを行いました。すでに本体はできていて、その姿をホームページでも見ることができます。岡山城(烏城)をイメージした黒を基調としたカラーリングがかっこいい望遠鏡です。

レーダーなど観測機器の性能が上がるとより多くのスペースデブリを観測できるようになり、解析のためのデータも膨大になります。これに対応するために新しい解析システム「SAKURA」では、処理能力向上と処理の自動化に傾注して開発を行いました。また、これまで実現していなかった役割として、国(防衛省)のSSAシステムとの連携がありました。そのインタフェイス作りは苦労がありましたが、国や関係企業の方々との密接な協力体制で実現できました。

これまで、たとえばレーダーの土台やドームの刷新では建築などプロジェクトチームとしては不慣れな分野の課題もありましたし、システムでは多様なスペースデブリのさまざまな軌道のパターンにいかに対応するかで苦心しました。メーカーはじめJAXA内外の英知を集めるかたちで、無数の課題を乗り越えてきたといえます。そして何より、ここまで来られたのはチームの力です。私はメンバー各自が取り組みたいことに挑める環境作りを心がけてきましたが、いま、メンバー間には熟成といいますか、阿吽の呼吸が生まれています。成果はこのチームあればこそだと思います。このプロジェクトが完了して他の部署に移っても、それぞれがこの経験を活かして活躍してくれると期待しています。

新しいSSAシステムは、2023年に本格運用に入る予定です。現在はそのためのお試し運転(試行運用)の段階で、1年かけて運用のためのセットアップを進めていきます。苦労も多かったですが、いよいよ新しいシステムの力が発揮できる段階に進められるんだと、わくわくしています。

1:SAKURA…(SsA Key technology Unified Research and Analysis system)JAXAの新しいSSA解析システム。