SLR用小型リフレクター「Mt.FUJI」開発背景

近年、宇宙の商用利用が盛んになり、宇宙環境の混雑化が進む中、宇宙の状況を正確に把握し、軌道上衝突を減らすことが国際的な課題となっています。そういった宇宙の状況を把握する観測手段としてレーダや望遠鏡が使われますが、それに続く第3の手段としてSLRが注目されています。SLRは、人工衛星に取り付けられたSLR反射器(リフレクター)に向けて地上のSLR局からレーザを照射し、反射して返ってきた光を再び検知するまでの時間を計測することで、SLR局と人工衛星との距離を高精度(mmオーダ)に測定するシステムです。

これまでのJAXAミッションにおいて、SLR反射器は、「衛星ミッションごとの特注品(海外製)」が使われてきましたが、特注品のため「高い、大きい、重い」といったデメリットがありました。そのため、SLR反射器を搭載する大学や民間の事業者は多くありませんでした。

JAXAが開発したSLR用小型リフレクター「Mt.FUJI」は、このような状況を踏まえ、その役割を低軌道用に特化させることで「安い、小さい、軽い」を実現したものです。

更には、より小型の「mini-Mt.FUJI」の開発も進めています。

SLR用小型リフレクター「Mt.FUJI」概要

  • ●7個のCCR(Corner Cube Reflector; 入射光を来た方向に再帰反射する特殊なプリズム)を具備しており、1器あたりの視野角は45度
  • ●手のひらサイズ
  • ●Mt.FUJIは高度800km以下、mini-Mt.FUJIは高度500km以下が対象高度
  • ●Mt.FUJIはHTV-X(FY2022打上)に搭載が決定済み。HTV-Xのコーンバンパパネル上に、120度間隔で計3器、視野が重ならないよう角度を調整するための専用の台座とともに搭載される
Mt.FUJIとMiniMt.FUJIの仕様

開発者の想い

「Mt.FUJI」は、2022年に打上げられるHTV-Xに3器搭載し、低軌道用の汎用的なSLR反射器として十分な性能を有するか、実証実験を行います。近い将来、SLR反射器が安価に流通し、搭載宇宙機が増えれば、宇宙の状況把握や宇宙デブリの除去に貢献することができます。全ての車がミラーを搭載するのが当たり前となったように、全ての宇宙機がSLR反射器を標準装備する時代が来ることを願うとともに、「Mt.FUJI」がその礎になることを期待しています。

Mt.FUJIの量産化・普及に向けて

JAXA軌道力学チームでは、Mt.FUJIの量産化・普及に向け「宇宙機にレーザ反射器(Mt.FUJI)をとりつけて追跡しやすくしよう」という寄附金の募集を行っております。
Mt.FUJIを量産化することで宇宙版SDGsにも有効と見込んでいますが、JAXA軌道力学チームだけでは量産化の資金確保が難しい現状です。
Mt.FUJIを衛星やロケット上段に搭載し、宇宙ゴミ問題に一矢報いる事に賛同いただける方の寄附をお願いいたします。