追跡ネットワーク技術センター/運用計画チームは、JAXAの地上局(アンテナ)や施設設備をどう開発・製造し、運用していくかという全体計画の策定、調整を担っています。将来のスケジュールや予算の調整、JAXA内外や国内外の部署や機関・企業や組織との連携を進める、いわば「橋かけ役」として活動するチームです。
全体の計画や予算の調整と外部連携を担当
私は全体計画や予算の調整に加えて、外部連携、国際調整も担当しており、NASAやESA、CNES(*)といった海外の宇宙機関との連携促進を行っています。さらに最近は民間での宇宙開発も非常に活発になってきており、JAXAの保有する地上局(アンテナ)を利用したいという要望も国内外に問わず増えており、その調整も行っています。
追跡ネットワークの責任は重大
宇宙開発では宇宙機やロケットが注目されがちですが、それらを支える追跡ネットワークは非常に大きな責任が伴います。追跡ネットワークは宇宙開発のインフラだと考えており、遅滞や不具合が発生した場合、個々のミッションではなくJAXAの全ミッションに大きな影響があります。
もちろん軌道上にある宇宙機と違って地上局や地球側のネットワークは修理ができますが、それゆえに不具合が生じても直せてあたりまえ、運用が止まらないことが大前提になります。コストとリスクを天秤にかけ、限られた予算のなかで優先順位を定めつつ、将来計画を踏まえた予算の執行判断などはこの仕事のポイントのひとつだと思います。
共感が橋かけ役の大きな魅力
滞りなく業務を進めるうえで、交渉・調整は重要だと考えています。一つのプロジェクトでも、参加する技術者・研究者、機関はとても多く、人も企業も立場ごとに背景が大きく異なります。それをひとつひとつ理解して俯瞰的な視点から主張の背景をくみ取り、全員が納得できる着地点を見つけ出す。言葉だと簡単ですが、実はこれがいちばん難しいところであり、同時に調整という「橋かけ役」の醍醐味でもあります。今まさに月面探査ミッションが立ち上がるフェーズであり、複数の部門と調整を進めています。合意できる着地点を探して、四苦八苦しているところです。
橋かけ役の大きな魅力の一つとして、世界中で同志が見つかる喜びもあるかもしれません。日本国内でこれだけ大きなアンテナの研究開発、運用している組織はJAXAだけということもあり、悩みがあっても相談できる相手がいません。ところがアンテナの維持管理や運用で苦労しているNASAやESAのメンバーと意見交換をすると、「あ、わかる!」と瞬時に共感できることも多く、急に距離が縮まることがあります。その点も面白い点です。
信頼関係を築くためにていねいに取り組む
もうひとつ注力していることを挙げるなら、国際連携でしょうか。JAXA地上局を海外の宇宙機関や国内外の民間企業にも利用していただき、日本のプレゼンス向上、信頼関係の構築に貢献できればと考えています。
私は2022年から3年間、JAXAパリ駐在員事務所に駐在していたのですが、この経験を通じて、日本は世界から信頼性の高いパートナーとして認識されていると理解しました。これはこれまでの諸先輩方の宇宙開発への取組み姿勢や真摯な対応によって培われたものであり、日々の誠実な仕事の積み重ねが結実して海外機関等との関係性をつくり、今の日本の宇宙開発の成果につながったと考えています。私もその一助となれるよう文化の違いを理解しつつ、丁寧に対応していくことが重要と感じています。
JAXAの強みを発揮する
個人的なキャリアの軸として、日本といえばこれ!というようなお家芸となる技術をすくい上げて世界に発信することです。研究開発は重要ですが、それだけでは広く使ってもらえません。ある技術が世界で広く貢献するためにはお金をまわす、経済をまわすというビジネスと紐づけることが重要だと考えています。特に追跡ネットワーク技術センターの持つ追跡管制技術、地上局の研究開発能力は非常に専門性が高い分野ですし、日本という立地も24時間の通信を確立するうえでメリットがあります。この点をもっとアピールしていきたいですね。
目の前の課題に一生懸命取り組もう
将来、宇宙開発やJAXAを進路として考えている方には、まず目の前にある仕事や勉強、趣味を、熱意を持ってやり遂げる、ということが一番重要とお伝えしたいです。宇宙開発は決して航空宇宙分野を学んできた人だけの世界ではなく、多種多様な専門家が集まってプロジェクトを遂行します。まずは自分の目の前にあることに一生懸命取り組み、これは頑張った、と言えるものを作ることが大切だと思います。
また、追跡ネットワーク技術センターは実際に地上局(アンテナ)があるので、実際に局へ行って、部品を触って手を動かすという作業が好きな人は向いていると思います。
計画チームは前述のとおり「橋かけ役」なので、コミュニケーション能力は重要です。自分の居心地の良いコミュニティに閉じこもっているのではなく、一歩でも外に出てみることが良い結果につながると感じます。
*:NASA、ESA、CNES
NASA(National Aeronautics and Space Administration)
アメリカ航空宇宙局(あるいは国家航空宇宙局)。アメリカ合衆国政府内における宇宙開発の計画を担当する連邦機関。1958年に設立され活動を始めた。略称の日本語での読みは「ナサ」。
ESA(European Space Agency)
欧州宇宙機関。宇宙開発・研究機関としてヨーロッパ各国が共同で1975年に設立。参加国は当初は10カ国だったが現在は23国に達している。略称の日本語での読みは「イーサ」。
CNES(Centre National d'Études Spatiales)
フランス国立宇宙研究センター。1961年に設立されたフランスの宇宙開発・研究を行う政府機関。欧州宇宙機関(ESA)で中心的な役割を果たしている。略称の日本語での読みは「クネス」。
