JAXA -宇宙航空研究開発機構-

宇宙航空研究開発機構

事業概要

宇宙を見守るSSA

宇宙状況把握(SSA)とは?

人類の宇宙活動の発展に伴い、地球の周りをまわる人工衛星やスペースデブリの数は年々増加し続け、地球周辺の宇宙空間における宇宙物体どうしの衝突の危険性は高まる一方です。
天気予報のための気象衛星、BSテレビを見るための放送衛星、カーナビのための測位衛星。私たちの生活は、今、そういった人工衛星たちに支えられています。そんな人工衛星たちが飛んでいる宇宙空間をこれからも安定的に利用するためには、スペースデブリのような宇宙物体の軌道を把握して管理することが大事です。
それが宇宙(Space)、状況(Situational)、把握(Awareness)、SSA、です。



スペースデブリとは?

地球を周回している不要な人工物体です。
例えば・・・・

  • 運用が終了した人工衛星
  • ロケット打上げの過程で発生したエンジンの破片やロケットの上段
  • 燃料タンクの爆発や意図的な破壊による破片
  • スペースデブリ同士の衝突による破片

※図はイメージ画像です。

1956年頃の状況

現在の状況


スペースデブリは増え続けている!

人類が宇宙活動を始めた1956年頃から、現在まで、スペースデブリの数は右肩上がりに増え続けています。現在、公称でソフトボール大の物体が観測できている米国の連合宇宙運用センター(CSpOC:Combined Space Operations Center)が公開しているだけでも2万弱、実際にはそれ以上の物体が漂っていると考えられています。


スペースデブリによるリスク

スペースデブリは、運用中の人工衛星にぶつかり、これらを損傷、破壊したり、国際宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士の生命を脅かすもとになります。ひとたび衝突が起こると、その破片が更なるスペースデブリとなり、数を増やす原因にもなります。軌道高度の低い物体は、いずれ大気圏に再突入しますが、中には燃え尽きずに地上に落下してくるものもあり、その場合は地上への被害が懸念されています。



スペースデブリに対するJAXAの取り組み

JAXAでは、スペースデブリの問題に対して、さまざまな取り組みをしています。この内、追跡ネットワーク技術センターが取り組んでいるのが、スペースデブリの観測、すなわち宇宙状況把握(SSA)です。

  • 観測: 地球を周回するスペースデブリを観測する技術
  • 解析: スペースデブリが人工衛星に衝突する確率を計算したり、スペースデブリが今後どのように増えていくかを予測する技術
  • 防護: スペースデブリが当たっても人工衛星に致命的な損傷を受けないようにする技術
  • 防止: スペースデブリが増えないようにしたり、スペースデブリを地球周辺から除去する技術

観測以外の取り組みについては、こちら


SSAに関する取り組み

JAXAでは1980年代に国立天文台と望遠鏡を用いた宇宙物体の観測の共同研究を実施し、その後2000年代にはいり、一般財団法人日本宇宙フォーラムが建設した美星スペースガードセンター(光学望遠鏡)と、上齋原スペースガードセンター(レーダー)によるスペースデブリ観測データを用いた解析等の技術開発を開始しました。2017年4月には、今後ますます重要になるSSA活動に向けて、この光学望遠鏡とレーダーをJAXAに移管し、2023年にはリニューアルの予定です。


スペースデブリの分布

地上から観測が出来ているスペースデブリは、その7割が低軌道(高度2000km以下)に集中し、残りが静止軌道高度(3万6千km)を中心とした高度帯に分布しています。JAXAでは、低軌道のスペースデブリをレーダーで、静止軌道帯のスペースデブリを光学望遠鏡で観測しています。



JAXAのSSAシステムの構成

低軌道のスペースデブリを観測するレーダー、静止軌道帯のスペースデブリを観測する光学望遠鏡、更にこれらの観測データを分析してスペースデブリの軌道を計算し、さまざまな解析を行う、解析システムがあり、これら3つを合わせてJAXAのSSAシステムと呼んでいます。



スペースデブリ観測施設

SSAシステムのレーダーは、岡山県鏡野町にある上齋原スペースガードセンター、光学望遠鏡は、同じく岡山県の井原市にある美星スペースガードセンターにあります。解析システムは筑波宇宙センター内にある追跡ネットワーク技術センターに置かれています。


※クリックで拡大します

レーダーによるスペースデブリ観測の仕組み

レーダーは、観測対象物体に電波を照射し、その物体に反射して戻ってきた電波を受信することによって観測を行います。この時、レーダーが発射した電波が観測対象物体に反射し、レーダーで受信するまでの往復時間から観測物体までの距離を算出し、電波の照射方向から、レーダーに対する観測物体の角度(方位角、仰角)を算出します。

レーダーは、一日に地球を何度も周回する低軌道帯のスペースデブリを主な観測対象としているため、目的とする観測対象物体が常に観測できるわけではありません。よって、レーダーから観測物体が見える限られた時間(可視時間)に可能な限り電波を照射し、より多くの距離、方位角、仰角の情報を取得します。これによって得られた観測物体までの距離、方位角、仰角の情報をもとに観測物体の軌道決定を行います。



光学望遠鏡によるスペースデブリ観測の仕組み

恒星は天球面上で動きませんが、スペースデブリは天球面上を移動します。光学望遠鏡では時系列の観測画像から天球面上を移動する物体を検出し、観測物体の天球面上の位置(赤経・赤緯)を算出します。この際、ガイドスター星表に記載されている恒星の天球面上の位置は正確に求められているため、観測視野内に写り込んでいるガイドスターと観測物体との相対的な位置関係から、観測物体の天球面上の位置は精度良く求めることができます。


地球を中心とした円軌道の場合、地球から遠いほど物体の進行方向速度は遅く、また天球面上の速度(地上の観測者からみた見かけの速度)も遅くなります。反対に地球に近いほど進行方向速度は速く、天球面上の速度も速くなります。したがって天球面上の速度から距離を推定できます。
ただし、円軌道であればある時刻の位置と速度(1回の観測の観測データから算出可能)のみから軌道を決定できますが、実際に円軌道であるかどうかは解りません。したがって軌道決定には軌道上である程度離れた複数の点の観測データが必要となるため、複数時刻の観測データから軌道決定を行います。

※クリックで拡大します



追跡ネットワーク技術センターのSSA活動

筑波にある追跡ネットワーク技術センターでは、岡山のレーダーおよび光学望遠鏡からの観測データに加え、米国の連合宇宙運用センター(CSpOC:Combined Space Operations Center)から入手する情報に基づき、さまざまな分析を行っています。
主に以下の4つの活動に取り組んでいます。

  • JAXAの人工衛星に接近するスペースデブリがないかどうかの監視
    衛星が飛ぶ予定の軌道とカタログ化(※)されている全スペースデブリが飛ぶ予定の軌道を照らし合わせて、近づかないか解析します。
    (※)軌道情報がわかっている宇宙物体
  • 接近を発見した場合は、それを人工衛星の運用担当へ通知
    どのくらい近づいて、どのくらい危険かを連絡・共有します。
  • 人工衛星が接近中のスペースデブリをどのように避けたらよいかの計算
    いつ・どの方向に・どれくらい避けることが適切かを解析します。
  • 大気圏に再突入しそうなスペースデブリの大気圏再突入予測
    地球大気や太陽からの放射によって、地球の周りを飛んでいる物体は、少しづつ高度が下がっていき、いずれ地球の大気圏へ再突入します。この情報をもとにスペースデブリが飛ぶ(降下する)予定の軌道を計算し、いつ・どこへ再突入するかを計算します。


これからのJAXAのSSAシステム

これからますます増えてくスペースデブリに、日本として対応するため、JAXAだけではなく、防衛省を中心とした国のSSA体制を構築する計画が走っています。JAXAはこれに対し、JAXAのSSAシステムで技術的に貢献する計画で、2023年本格運用開始を目指してリニューアルを予定しています。
新しいJAXAのSSAシステムは、今よりも小さなスペースデブリを追いかけられるレーダーにする予定です。そうすることで、より多くのスペースデブリの軌道が把握できるようになるため、観測データを処理する解析システムも能力向上させます。また、光学望遠鏡は、古くなった部分の修理をします。これらのシステムを使って、将来のためのスペースデブリ観測技術の研究が行えるような工夫も凝らしています。 



新しいSSAレーダーシステム

2019年現在運用中のJAXAのSSAレーダーは、例えば高度650kmを飛ぶ物体であれば、およそ1.6mサイズ以上のものを観測することが可能です。また、一番遠くは、1,350kmまでを観ることができます。ただし、その場合は、物体の大きさが直径5.5m以上であることが必要です。
ところが、地球の周りには、1.6mより小さな物体がたくさん飛んでいて、公称でソフトボール大の物体が観測できている米国の連合宇宙運用センター(CSpOC:Combined Space Operations Center)が公開しているだけでも2万弱。内、JAXAのSSAレーダーが観測範囲としている低軌道帯には、その約7割もの物体が存在しているのですが、実際に観測できているのは、その約5%にすぎません。


そこで、新しいSSAレーダーは、今よりも小さい物体を追いかけられるよう、観測能力向上を目指します。目標は、高度650km以下のソフトボール大(直径10cm級)の物体を観測できるようになることです。
このためには、レーダーの観測能力を今より200倍超向上させなければなりません。そこで、レーダーアンテナのサイズを大きくし(アンテナ素子数を増やし)たり、より出力が高く、より長いパルスを送信可能な半導体を採用したり、受信機の感度を向上させたり、更にハードだけでなく、信号処理技術などソフトの面でも能力向上をさせたりしています。
詳細は、次の改訂時にご紹介したいと思います。(2019年10月記)


2019年度10月現在、CSpOCが公開しているスペースデブリ数(青)に対して、現在のJAXAのレーダーで観測できている範囲(黄)、将来のSSAレーダーで観測できるようになる範囲(橙)。CSpOC公開分には、JAXAのレーダーのある岡山県から観測することができない物体の数も含まれています。

新しいSSA光学望遠鏡システム

2019年現在JAXAが有するSSA光学望遠鏡は、主鏡の口径が1mのものと50cmの光学望遠鏡があります。それぞれの観測能力(検出限界等級)は、1m望遠鏡が18等級、50cm望遠鏡が16.5等級です。この能力があれば、JAXAのSSA光学望遠鏡が主な観測範囲としている静止軌道帯(高度36,000km)では、おおよそ1m程度のサイズの物体が観える計算になり、米国の連合宇宙運用センター(CSpOC:Combined Space Operations Center)が公開している同じ高度の物体を、ほぼ観測できる能力があります。

ところが、現在の望遠鏡、特に1m望遠鏡に老朽化等から故障が出始めました。このままでは、観測が出来なくなってしまうかもしれません。そこで、1m望遠鏡を新しいものに更新します。また、50cm望遠鏡も含めて、将来のSSAに関する研究開発に対応できるよう機能拡張も行う予定です。さらに、筑波宇宙センターにある解析システムとリアルタイム性の高い連携運用ができるような機能を望遠鏡のデータ処理システムに付加します。

詳細は、次の改訂時にご紹介したいと思います。(2019年10月記)


2019年10月現在、新しい1m望遠鏡設置に向け、旧1m望遠鏡の撤去が完了しています。同時に、新しい1m望遠鏡は、現地に運び込む前に、メーカーの工場で試験を実施中です。今後、美星スペースガードセンターに移送して設置を行い、動作等に問題ないことを確認した後、2020年春頃から運用再開の予定です。

  • 新1m望遠鏡の工場での駆動試験の様子(8倍速です)は、こちら



新しいSSA解析システム(SAKURA)

SSAレーダーの能力向上に伴って、観測できる物体数が、これまでの10倍近く増加します。このため、その観測データを処理するSSA解析システムも、処理能力向上が必要となります。
新しいSSA解析システムは、観測物体数増加が作業増加につながらないよう、処理能力向上だけでなく、出来るだけ自動処理をする工夫も行います。また、国のSSAシステムにも観測データ提供を行うために、新たな連携機能も追加します。更に、日々の観測運用業務に影響を与えないで、新しいSSA解析システムの、更にその先を見据えた研究、開発を実施できるような環境も整備しようと計画しています。

新しいSSA解析システムの、ニックネームは「SAKURA」です(一応、SsA Key technology Unified Research and Analysis systemの略)。
これまでの解析システム同様、レーダーおよび光学望遠鏡からの観測データに基づき、スペースデブリの軌道を計算、JAXA衛星の軌道と比較して、両者に接近がないかを解析します。その結果や国のSSAシステムからの情報提供により、接近を検知した場合は、更に分析を行って、所定の条件で関係者へ通知をするとともに、JAXA衛星の関係者がスペースデブリ衝突回避の軌道制御を計画する際に必要な情報を提供します。
また、JAXAが着目するスペースデブリが、徐々に高度を下げ、大気圏に再突入しそうな時は、その時期や大気圏再突入ポイントを予測する解析も実施。必要な情報を関係者に通知します。 これまでになかった機能としては、国のSSAシステムとの連携機能が挙げられます。JAXAだけでなく、国からの観測要求を考慮して効率よく観測を実施できるような工夫を凝らしています。 詳細は、次の改訂時にご紹介したいと思います。(2019年10月記)

SSAプロジェクトチームロゴ。
左側は光学望遠鏡のシルエット、右はレーダーのシルエット。
中央の楽し気な子供たちは、宇宙を安心な空間にしてるんだ~という雰囲気を醸し出しています。



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